astre −星−


04


まだまだ




まだだよ




まだ気付くには早すぎる




まだまだ



















時間はさかのぼって宿を出て主のもとに向かった手塚たち・・・




「ここで今しばらくお待ちください。」
主のいる屋敷に着き、屋敷の前に立っていた門番に身分を明かし主に会わしてくれるよう言うと門番が屋敷の応接室のような部屋に案
内してくれた。
「一国の主だっていうのに随分質素なんだね。」
不二が隣にいた河村に話かけると河村はそうだねと頷いた。この屋敷は言われないと主の家だとわからないような普通の家だった。
「前の主なんかは大豪邸に住んでたしな。」
「ほんと!俺あいつ嫌いだった!」
大石と菊丸も同意していると部屋に1人の男が入ってきた。
「待たせたな。俺がこの国の主の橘だ。」
「手塚だ。」
お互いに握手をすると橘が口を開いた。
「この国はどうだ?」
「見違えた。以前の不の国の面影がないな。いい国になった。」
「一見はそうさ。だが裏を返せば以前の不の国でお偉いさんだった奴や兵士だった奴がうようよいるんだ。そいつらは俺が憎いはずだ
からな。」
「だったらもっと警備を強化してはどうだ?」
乾が眼鏡を上げながら言った。
「いや、ここには俺が1番信頼している奴等が揃っている。だから大丈夫だ。それに下手に警備を強化すると奴等を刺激しかねないしな
。」
「それもそうだな。」
乾は納得した風だった。
そんな話をしていると突然ドアがノックされた。
ノックというよりバンバンと叩いている感じだった。
「何だ?入れ。」
橘がドアに向かって言うと勢いよくドアが開かれ、1人の男が入ってきた。
「橘さん!!大変っす!!町の宿屋の1つが何者かに占拠されました!!宿屋の客を人質にとって立てこもっています!」
「何ッ?!それは本当か?!」
「はい!町に視察に行っていた石田と桜井からの報告だから確実です!」
「くそっ!前の主の兵士かもしれないな。」
「橘。1つ聞いてもいいか?」
「何だ?」
手塚が今の話の中で気になったことを聞いた。
「町の宿屋だと言ったな、それはどこの宿屋だ?」
「神尾、どこかわかるか?」
神尾を呼ばれた今報告していた男は少し考えて答えた。
「はい。この通りを少し行ったとこにある宿屋です。丁度その時宿屋の主人と夫人は出かけていて娘しか宿にいなかったそうですが、そ
の娘も人質になっているそうです。」
「その娘の名は?」
再び手塚が尋ねると神尾はまた少し考えて答えた。
「確かキョウだったと・・・。」
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
「手塚!」
大石が手塚に叫ぶと手塚はわかってるという風に頷いた。
「橘。俺と一緒にその宿に来てくれ。」
「ああ、俺はその宿に行くつもりだが。お前たちはここにいたらいいじゃないか。」
「僕たちに仲間がその宿にいるんだ。」
この屋敷にいろと言う橘に不二が反論した。
「助けに行かないと!きっとまだ体力が回復していない。」
「どういうことだ?何故一緒に来なかった?」
話の読めない橘に乾が説明した。
「ここに来るまでに体力を使い果たしてしまったんだ。まだ力のコントロールができていなかったからな。どれで宿で寝ていたほうがいい
だろうと置いてきたんだ。」
「そういうことならお前たちも協力してくれ。」
「ああ。」
手塚たちが頷くのを見て橘は神尾に言った。
「皆をその宿屋に集めて、まず周りの住人達を避難させてくれ!」
「わかりました!」
橘が神尾に叫ぶ様に言い、走って部屋を出て行った。そして手塚たちのほうへ向いた。
「よし、俺達も行くぞ!」
「ああ。」











































「リョウ、どうしよう。」
キョウが不安そうにリョウに話しかけた。
「多分俺と一緒にいた人たちが助けてくれるよ。」
キョウには安心させるために言ったが、

―これぐらいの奴等なら俺1人でも倒せるけど人質にされてる人は俺とキョウさんを除いて7人。年寄りが2人、親子で3人、若い男と女
が2人。これだけの人数を守りながら戦うのに俺の体力が戻ってない。どうする・・・

「お母さんー、怖いよぉ・・・。」
ふと子どもが母親に泣きそうになりながら抱きついていた。子どもはまだ幼く5歳ぐらいに見えた。
「大丈夫よ。お父さんもお母さんもついてるから。それにきっと誰かが助けに来てくれるわ。」
「そうだぞ。大丈夫だ。」
泣きそうな子どもに父親も母親も笑顔で優しく慰めていた。
「ねぇ、リョウ。きっと主様たちが助けにきてくれるわよね。」
親子を見つめていたリョウにキョウは言った。
「おい!そこ!うるさいぞ!」
リョウが返事をする前に男達の1人に遮られた。男のほうを見ると親子のほうを見ていた。
「メソメソしやがって、だからこどもは嫌いなんだ!」
そう言って親子のほうへ足を進めようとしたのをリョウが男の前に立ち阻止した。
「なんだお前。」
「子どもなんだから怖いのは当たり前じゃん。そんなこともわからないの?」
「なんだとっ?!」
「怒りっぽい人は嫌われるよ。」
「このガキッ!!」

パァン!

見るとリョウの頬は赤く腫れていた。キレた男がリョウの頬を殴ったのだった。だが、リョウは叩かれたにも関わらず不適な笑みで男を
見、そして
「まだまだだね。」
と言った。
もう1度リョウに殴りかかろうとする男にリーダー格の男がとめた。
「やめろ。」
「でも、リーダー!こいつ俺のことコケにしやがったんだ!」
止めたリーダーに男が抗議すると一睨みで男を黙らせた。
「黙れ。それに見てみろ。こいつの顔可愛いじゃねぇか。」
そう言ってリョウの顎を掴み上をむかし、よく顔が見えるようにすると、意志の強そうな目とぶつかった。そしてその小振りな唇から生意
気な言葉が出てきた。
「あんたに言われても嬉しくない。」
男はその言葉に一瞬とまり、笑い出した。
「ははは!生意気な奴だ。だが、今は俺達のほうが立場的に強い。大人しくしておくんだな。それに・・・。」
ふと外を見て
「主様のお出ましだ。」
と言った。



































「橘さん!!」
橘と手塚たちが宿屋に着くと神尾と見たことない男たちが6人いた。それぞれ回りの住民や野次馬たちを避難させていた。
「中の様子はどうだ?」
「進展なしです。」
「手塚、どうする?」
不二が神尾の言葉を聞いて手塚に尋ねた。他のメンバーはもう突入する気満々だった。
「とにかく人質にされている人たちの人数を安否を知りたい。」
「わかった、聞いてみるさ。」
手塚の話を聞いていた橘が頷き、宿屋に向かって叫んだ。
「立てこもっている奴等に告ぐ!目的はなんだ?!」
すると窓から1人の男が顔をだした。
「来たな。俺達は前の主様に雇われていた兵士だ。用件は1つ。お前が主の座からおりることさ。」
「俺が主の座からおりても前の主にはもう戻らないぞ。奴は他国に亡命したのだからな。」
「わかっているさ。只お前が主の座にいることが気に入らないのさ。」
「用件はわかった。だが、人質にとっている人たちは関係のない人たちだ!解放してもおらおうか。」
「それはできねぇ相談だ。心配するな、今のとこ全員無事さ。まぁ、どうしてもというのなら開放してやってもいいが。」
「キョウ!!」
突然野次馬の中から叫び声が聞こえた。
「あの中に私の娘がいるんだ!」
「あぁ!キョウ!!」
飛び出してきたのは40代ぐらいの夫婦だった。
「危ないっすよ!」
今にも中に入ろうとしたのを桃城と河村が止めた。
「もしかしてキョウさんのご両親ですか?」
「ああ、店番を娘に任せて2人で食材を買いに行っていたんだ。そしたらこんなことにっ!!」
「へぇ〜この宿の主人か。」
男が宿の主人の言葉に反応し、部屋の中に声をかけた。
「おい、この宿の娘を連れて来い。」